誰でもできる筆のケア ― 描きにくさの原因、実は筆かもしれません


(2025/5/13 内容を大幅に加筆修正)


筆の毛は「髪の毛」と同じ?


筆には天然毛や化学繊維などさまざまな種類がありますが、いずれの場合も「毛」であることには変わりありません。人間でいえば、「髪の毛」をイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。

では、その髪の毛が油で汚れたとき、シンナーのような強い溶剤で洗うでしょうか?

当然そんなことはしませんよね。

 

しかし油絵具を使った後の筆は、まさに「油で汚れた髪の毛」と同じような状態です。

適切に洗わずに放置すると、毛は固まり、筆はガチガチになってしまいます。

そこで今回は、油絵具や水性絵具を使った筆を、できるだけ新品に近い状態で長く使い続けるための、簡単なケア方法をご紹介します。

 


【道具】


・石鹸

 「カウブランド 牛乳石鹸 青箱」がお勧め。

 植物性よりも、動物性の石鹸の方が凄く泡立ちます。

 

・ウォッシングオイル

 専門のものであれば、どのメーカーでもOK。


・筆洗器

 ウォッシングオイルを入れる容器。

 こぼれると大変なので、完全密閉型を強くお勧め。


・水性クリーナー

 専門のものであれば、どのメーカーでもOK。


・洗い流さないリンス

 「パンテーン 洗い流さないトリートメント 125mL エクストラダメージリペア インテンシブ ヴィタミルク」が お勧め。

 洗い流さないリンスがなければ、普通のリンスでもOK


・ヘアブラシ

 なるべく隙間が細いもの。

 100 均のものでOK。

 

・キッチンペーパーやボロ布


【使ってはダメなもの】

・食器用洗剤

 汚れは落ちるが筆が痛むので。

 髪を洗剤で洗うとどうなるか想像しましょう。

 



【手順】


①キッチンペーパーやボロ布などで筆についている絵具を拭き取る。

   捨てる画溶液(サラサラしたもの)があれば筆につけると汚れが落ちやすい。


②ウォッシングオイルで筆を洗い、しっかり拭き取る。

 次の工程の水性クリーナーに拭き取らずにいれると汚れが落ちづらくなります


③水性クリーナーで筆を洗う。


④石鹸で「油のヌメリが落ちるまで」洗う。

   目安は1回洗ってからすすぎ、もう一度しっかり洗う。

 もし筆に絵具の色が残っている場合は出来るだけなくなるまで洗う。

 緑色のビリジャンなどは洗っても色が残りやすい(染まりやすい)ですが問題ないです。


⑤水で石鹸を完全に洗い流す

 ⑦の洗い流さないリンスを使用しない場合は、この段階で普通のリンスをつけて洗い流してもいいです。

 

⑥タオルなどで筆を拭く。


⑦洗い流さないリンスを筆に塗る。

 普通のリンスでケアしてる場合はこの工程を飛ばして下さい。

 塗る場合は本来髪用なのでほんの少量で十分です。


⑧ブラシで筆先を整える。

 筆のくせ毛やハネを予防できます

 

⑨乾燥させて終わり

 

⑩⑦の洗い流さないリンスを使用している場合、リンスが残っているので一度テレピンに筆を軽くつけ、布などでリンスを拭き取ってから使用するほうが無難。

 

※アクリル絵具を使った筆は③~⑧のみをする。

 水彩絵具やポスターカラーの場合は③をしてもいいですが④~⑧だけでもキレイになります。

 

 


【その他】手などについた油絵具を簡単に落とす方法


「工業用ハンドクリーナー」は油汚れを落とす力が非常に強力なので簡単に落ちる。

※工業用ハンドクーナーは基本的に濡れていない手で使うものが多いです。

 

 


【その他】ガチガチに固まった筆の対処方法。


【油絵具の場合】

筆のお手入れの手順①~③をやった後に筆を水性クリーナーにつけっぱなしにして半日程度放置する、後は筆が柔らかくなるまで様子を見てから④以降のケアをする。

※あまりにもつけ過ぎと、筆のコシがなくなってしまったり、根本から毛が抜けてしまうことがあるので注意

 

アクリル絵具はの場合は手順③をやった後に同じように放置して様子をみながら④以降のケアをする。

 

 


終わりに


「弘法筆を選ばず」という言葉がありますが、これは「優れた技術や才能があれば、どんな道具でも使いこなせる」という意味です。

とはいえ、実際には良い道具を使ったほうが、より良い結果につながるのは間違いありません。

 

今回紹介した筆のお手入れ方法は、センスや才能に関係なく、誰でも実践できるシンプルな内容です。

特に「うまく描けない」と感じている方こそ、筆をはじめとする道具の状態を整えることで、不必要な描きにくさやトラブルを避けられるようになります。

そこから生まれるストレスが減るだけでも、描くことへの集中力や楽しさが変わってくるはずです。