<「メグとばけもの」Odencat株式会社 https://odencat.com/bakemono/ja.html>
※ 画像素材は公式HPのプレスキットを使用しています
講師はたまにゲームをするのですが、今回は最近プレイしたゲームから、表現全般の「抽象度」について書きたいと思います。
抽象度の詳しい説明は、後々していきます。
上の画像は、最近発売した「メグとばけもの」というゲームの一場面で、個人的にとても美しく見えます。
シナリオの流れや、音楽などの演出も影響しているのですが、この一枚絵だけでも、やはりそう感じさせてくれます。
今の時代のリアルな表現があふれている中でも、チープさを感じません(これは主観が入っているかもしれません)。
では、リアルな表現があふれる中、ドット絵表現の作品が今だに出て続けていて、それを魅力的に感じるのは、なぜなのでしょうか?
これは、少し考えれば当たり前のことで、例えば、小説(文章)がドラマや映画に、必ず劣るということはありません。
また、昔の文体や表現だから、その本が最新のものより劣るということも、当然ありません。
先程の抽象度の話をすると、基本的に要素が少ないほど、表現の抽象度は上がります。
(※抽象度の意味合いは他にもありますが詳しくは省略します)
例えば、上記のような小説(文章)は映画(映像、音声)よりも抽象度が高くなります。
ゲームも、リアルなハイポリゴンの表現よりも、ドット絵のほうが要素が少ないので、抽象度が高くなります。
また、基本的に抽象度(余白)が高いほど、見る側の人が介入(補うこと)が出来る要素が増えます。
例えば、小説や、漫画などを読んで、その登場人物がどんな声なのかは、各々が想像します。
映像化したときに、「自分のイメージと何か違う」なんて感じたことは誰でもあるのではないでしょうか。

<「メグとばけもの」Odencat株式会社 https://odencat.com/bakemono/ja.html>
※本編は日本語でプレイ出来ます
また、ゲームのドット絵のキャラクターの場合、ちょっとした表情(しか出来ないこと)が、様々な想像を広げます。
ドット絵のゲーム表現は、そのような見る側(プレイヤー)が介入出来る幅の広さ、抽象度の高さが豊かさを生んでいると、講師は考えます。
このように、「最先端の技術や表現=優れている」のではなく、
「自分が使っている技術や表現を目的に対していかに最大限に使うか」が、当たり前ですが重要な訳です。
そして、どのくらいの抽象度にするかは「何を表現したいか」を大前提に、「何が出来るか(予算、技術、時間など)」でも変わります。
また、抽象度が低いリアルな表現には、難しい問題があると講師は考えます。
抽象度が低い表現ほど、見る側が介入する幅が狭くなるのですが、そうなると作る側が責任を取らなくてはならない要素が増えます。
わかりづらいので、具体的にゲーム話をします。
例えば、凄くリアルな人物表現であればあるほど、ちょっとした違和感が目立ちます。
リアルな人物が家の中を走って、廊下の角をうまく曲がれず壁にぶつかったり、そのまま前進し続けたりするのは、個人的にとても面白く感じます。
あるゲームで、日本のリアルな駅の改札を定期券使って入るのですが、出たり入ったりが何度も出来るので、講師は繰り返して一人で笑ったりしていました。
どんなに高級ブランドでオシャレな服装をしていても、一つシミが見つけてしまうと、自然とそこが目立って気になってしまうのと同じです。
また、シナリオについての同じことが言えると思います。
こちらの方が問題として大きいかもしれません。
例えば、物凄くリアルな映像で、重厚なファンタジーの世界を作っているのに、シナリオが子供が考えた話のようでは、明らかに違和感があります。
基本的に、リアルな映像にはリアルな世界観がないと、上記の服のシミのように、悪目立ちしてしまいます。
しかし、シナリオはグラフィックのように常に進化していく訳ではないので、最新のグラフィックに合わせたシナリオというのは相当難しいと思います。
逆に、絵本のような世界設定で少し無理があったとしても、「まぁ、絵本だからな」と納得して気にならないということがあります。
アンパンマンがなぜ空を飛んでいるか、科学的な根拠がないことに違和感を感じる人はまずいないでしょう。
抽象度を低くしたり、リアルになればなるほど、ちょっとした違和感が目立ってしまいます。
そして、見る側(プレイヤー)が補うことの出来る幅が少ないので、製作者側が違和感がないように責任を取る必要が出てきます。
だからこそ、「技術的に優れている=優れたもの」にならないのだと講師は考えます。
何でも自由に出来るようになればなるほど、それを扱うのは難しくなります。
技術に使われるのではなく、自分が使うようにコントロールするが大切なことは表現全般に言えることです。
また、当然「ドット絵=良い」という訳ではないので、特に今の時代は上手く使わないと凄くチープな表現になってしまいます。
ドット絵のゲーム表現の話を戻すと、最近は「HD-2D」という2次元のドット絵に3次元的表現を加えたものがあります。
下に具体定例として、わかりやすい動画を埋め込みました。
一見すると古臭く、廃れたとされる表現でも、現代の技術や視点を組み合わせることで、新しい表現が生まれることがあります。
現在の流行ばかり追うのではなく、過去の表現を現代的な視点で考えてみることで、表現の幅が広がることもあります。
<『HD-2D版 ドラゴンクエストIII』ティザームービー スクウェア・エニックス>
何かを表現する場合、どのくらいの抽象度にするかはとても重要な選択です。
自分が出来るからといって、何でも詰め込みすぎないで、必要なことだけを選ぶ、「引き算的な考え方」が大切です。
そのためにも、表面的なことに振り回されずに、「一言でいうと何を表現したいか」をまず明確にしていきましょう。
それを的確に表現できれば、使い古したような表現にも新たな輝きが生まれるでしょう。
今回画像を使用させていただいた「メグとばけもの」について簡単に紹介したいと思います。
上記の動画をご覧いただければ、大体の感じは伝わるかなと思います。
マザーシリーズやポケモン、アンダーテールなどの作品の影響も感じられる、魅力的な作品です。
また、音楽もとても魅力的で、情景により広がりを感じさせてくれます。
登場するキャラクターも個性的で魅力があり、本編では描かれていない、各々ストーリーがあることも匂わせています。
ゲームの難易度としては、比較的簡単なので、ストーリーが気になる人は、是非プレイしてみることをオススメします。
「メグとばけもの」
Adventure RPG
Odencat株式会社
プラットフォーム Nintendo Switch / Steam (PC, Mac, Linux) / Xbox X|S One