今年最初のブログになります。
画像は講師が作った今年の年賀状(原画は水彩と色鉛筆使用)です。
今回のブログの「抽象的な描き方」は、この原画の「地面の部分(風景)」についてです。
この地面は、何か具体的な物を描いてるようで、描いていない抽象的な表現です。
このような表現は、どのような基準や理屈で描いているのか説明します。
何となく適当に描いているようで、実は基準があります。
<地面の拡大図>
先に、結論を言うと地面(風景)の部分は、実際の風景の中から、リズム(密度や質感など)を抽出して描いています。
ただし、実際の風景を見て描いている訳ではなく、イメージを描いています。
イメージとしては春の草原を設定しています。
地面の下は水色を塗って何となく池のイメージもしています。
さらに具体的な描き方は、
・草原なので、緑系の横長の面ををまず塗る。
同じ色で何度も塗ると似てくるので、緑系の中で色の差を出して描く。
・周りに生えている草花を、細かい単位の線の表現で描く。
そのときに横の線だけだと立体感が出ないので、縦の線で植物が上に伸びている表現をする。
また、色が似てしまうと馴染んで立体的に見えないので、緑系以外の色を積極的に使う。
線の太さや長さ、色を意識的に変えることで、メリハリをつける。
・水彩絵具だけだと馴染んで立体感が弱いので、色鉛筆を使って質感の差を出す。
色鉛筆は水彩に比べるとザラザラした質感になります。
水彩の滑らかな質感と対比することで、お互いの質感がより引き立て合います。
こんな感じで描いています。
今度は広い意味での、抽象的な表現について説明します。
抽象的な表現の分け方の1つとして、以下のような見方があります。
①何も元の形がない、完全な抽象表現
②実際の物の要素を抽出した表現。
その基準だと、イラストなども②の抽象的な表現といえます。
例えば、人物に輪郭線を描くことも抽象表現となります。
人物の形を「線」に置き換えて、立体感を無くし、平面的に表現する=抽象化という見方となる訳です。
この内容が気になる方は「抽象美術入門」という本が分かりやすいかもしれません。
かなり昔に読んだので覚えている内容は曖昧ですが、わかりやすかった印象があります。
また、有名な画家でピート・モンドリアンという人がいます。
名前を知らなくても絵を知っている方は多いと思いますが、この人も元々実際の物の抽象化からスタートした画家です。
↓こんな絵の人です。
※著作権の都合でアマゾンの商品画像を使用しています。
↓モンドリアンの抽象化の過程
※著作権の都合でアマゾンの商品画像を使用しています。
モンドリアンは最終的に垂直、水平と三原色(赤、青、黄)と白と黒というところまで徹底的に物の要素を抽出、還元しました。
モンドリアンの表現は極端ですがこのように、実際の物の要素を抽出することで具体的に描いていなくてもそれらしさを感じさせる表現などが出来ます。
その取捨選択が自由に出来ると、より自分に合った自由な表現が出来る訳です。
最後に、講師の作品も参考に載せたいと思います。
講師の絵も具体的な物を基本的には描きませんが、物の立体感や質感などを抽出することにより、
鑑賞者さんの自由な発想でイメージしてもうらうことが狙いの1つにあります。
痕跡のリズム / The Rhythm of the Trace, 2010,
watercolor, oil, alkyd on canvas,
145.5×145.5 cm (57.3×57.3 in),
Pigozzi Collection, Switzerland.
無題 / Untitled , 2010,
oil, alkyd on canvas,
162×162 cm (63.8×63.8 in),
private collection, Japan.
集積のリズム Ⅴ / The Accumulating Rhythm Ⅴ , 2013 ,
silk screen , ink , oil , alkyd on cotton
canvas, 96.2×110.4×5.9 cm (37.9×43.5×2.3 in),
private collection, Germany.
接 Ⅱ / Contact Ⅱ, 2016,
oil, alkyd, acrylic on linen canvas,
97.4x108.1x6 cm(38.4×42.7×2.4in)
Fusion ⅩⅣ, 2019,
alkyd, oil, acrylic, alkyd on color cotton,
98×108.5×6 cm(38.6×42.7×2.4 in)